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篠田博之の「週刊誌を読む」

震災の影響、メディアにも

 震災の影響はメディア界にも様々な影を落としている。雑誌界最大の部数を誇る『週刊少年ジャンプ』は三月二十八日発売の17号が一週間発売延期。また十四日発売の15号がまだ被災地に届けられていないとして、ネットで無料公開された。
 『週刊朝日』や『サンデー毎日』など新聞系週刊誌は、震災特集の増刊号を発行。通常の週刊誌より判型を大きくし、朝日の方は既に休刊した『アサヒグラフ』の「緊急復刊」とうたっている。テレビや新聞で見てきた被災地の写真だが、まとめて見ると改めて息を飲む。震災への関心の高さを反映して売れ行きはよいという。
 テレビCMの自粛が続き、空いた枠にACの広告、しかも同じものが大量に流されていることに苦情が殺到しているらしい。『週刊新潮』3月31日号によると、十四日から十六日早朝までのCM総数八千百七十三本のうちAC広告が六千二百六十本、何と四分の三という異常な事態だったという。
 そのAC広告の一バージョンで詩人・金子みすゞの「こだまでしょうか」という詩が流れているが、これも問い合わせが殺到し、金子の遺稿集が売りきれるなど時ならぬブームが起きているという。『週刊新潮』記事に金子の娘のコメントが紹介されている。「この詩は昭和の初期に書かれたもので、こうして蘇ったのは奇跡のようなことですね」
 この『週刊新潮』のグラビアには、岩手県山田町で、震災で亡くなった人の遺骨を拾う火葬場の写真が掲載されている。「喪服姿は見当たらない」と見出しにある通り、被災者が着の身着のままで遺骨を拾っている。こんなふうに火葬された遺体はごく一部で、あまりに死者が多いため、火葬できない遺体が多いのだという。何とも悲惨な話である。
 原発事故をめぐっては、『週刊朝日』4月1日号の広瀬隆さんの緊急連載や、上杉隆さんの「『亡国の官邸』全内幕」など、政府を厳しく批判した記事も目につく。『週刊文春』3月31日号には、菅首相が防災担当相にかけるつもりの間違い電話を三月十五日にニ度受けたという鹿児島県の市民の話が紹介されている。国の危機管理力が問われている。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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