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篠田博之の「週刊誌を読む」

大相撲野球賭博リークの狙いは何だったのか 7月4日掲載

 野球賭博をめぐる大嶽親方(元貴闘力)のインタビューを『週刊文春』7月8日号が「独占告白」と銘打って載せている。あれだけテレビのインタビューに出まくっているのに、何が独占なの?と思ってしまうが、六ページに及ぶ詳しい記事を読むといろいろなことがわかる。
 興味深いのは、今回の騒動に火をつけた『週刊新潮』の報道が誰のリークだったかに言及している点だ。琴光喜が野球賭博で元暴力団に恐喝されたというこの事件は、実は琴光喜でなく自分の事件なのだ、というのが大嶽親方の告白だ。
 それがどうして琴光喜の事件になってしまったかというと、恐喝を受けて進退窮まった時に、警視庁の警察官に相談した。その時に保身のために「自分でなく琴光喜の件で」とウソをついたというのだ。大嶽親方はこう言っている。
 「私が相談した方とは別の警察側の誰かが、『琴光喜が賭博で脅されている』と『週刊新潮』にリークしたのでしょう。記事には琴光喜の名前が大きく出ています。これはまずい――そう思いました」
 私も本欄に書いたように、事件の捜査が進むにつれて出てくる情報が、最初の『週刊新潮』の描いた構図とぴたりと合っていたため、同誌の取材力はたいしたものだと思っていたのだが、何のことはない。そもそもリークしたのが警察筋だったというわけだ。
 それがわかると、今回のスキャンダルの様相が違ったものとして浮かび上がってくる。この騒動は、相撲協会内部の誰かが、この際膿を出すべきだと考えて週刊誌にリークしたものかと思われたが、そうではない。そんな自浄作用が働いたのでなく、暴力団と角界のつながりを見かねた警察が、外から衝撃を加えたというのが、真相だということになる。
 ほぼ時期を同じくして「砂かぶり席」が暴力団に便宜供与されていたというスキャンダルも警察サイドから流されていたのだが、二つの騒動は同じ構造だったというわけだ。
 だからある意味では極めて深刻だ。この揺さぶりに対して、対応できる自浄能力を本当に角界が持っているのか。そのことがいま問われているわけだ。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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