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篠田博之の「週刊誌を読む」

大相撲賭博スキャンダル 知っていてこれまで書かなかったマスコミの責任

 大相撲の賭博スキャンダルが連日大きく報道されている。相撲協会は、これを機に「膿を出す」と言っているが、何しろその取り調べ役の生活指導部長・陸奥親方自身が疑惑を指摘されている状況だ。膿を出すどころではないのが実態かもしれない。
 疑惑追及の先鞭をつけた『週刊新潮』は7月1日号で、その陸奥親方の賭博疑惑を徹底追及している。『週刊文春』も7月1日号で「『野球賭博』黒いリスト」と題して大きな特集を組んでいる。その中で気になったのは、古参の相撲記者のこんなコメントだ。「来るべきときが来たなという思いですね。何十年も前から、麻雀、花札、将棋で賭けるのは、角界の日常風景でしたから」
 これに続けて記者たちが見聞きした様々な賭博現場の光景が披露されているのだが、「ほとんどの力士が『こんなこと書かないよね』と記者たちの前でも堂々と賭けて、悪びれるそぶりもなかった」という。
 今は連日、追及を続けるマスコミだが、実はこれまでも疑惑を知っていながら報道してこなかったというわけだ。考えてみれば、これも大きな問題ではないのか。これまで相撲協会を追及してきたのはもっぱら週刊誌だが、相撲協会はまだ週刊誌を会見から締め出しているという。
 マスコミのあり方をめぐっては、『週刊ポスト』でジャーナリストの上杉隆氏がいまだに「官房機密費」追及のキャンペーンを続けている。7月2日号ではこう指摘している。「問題は、『政治とカネ』を追及してきたメディアの側の一部が、平気で機密費の『毒まんじゅう』を食らっていたことだ」
 一方、『週刊朝日』7月2日号は「外交機密費を受け取った新聞記者たち」と題して元外務省主任分析官・佐藤優氏のインタビューを掲載している。外務省のマスコミ対策のために外交機密費が使われていた。その実態を具体例をあげながら佐藤氏は暴露しているのだ。
 もちろんマスコミが全部そうだというわけではないだろう。しかし、こうした疑惑についてはマスコミ自身が解明し、それこそ膿を出すべき時期に来ているのかもしれない。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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