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篠田博之の「週刊誌を読む」

角界騒動広がる波紋

 週刊誌評という趣旨とずれるので、そろそろ切り上げたいとは思うのだが、今回も少し映画「ザ・コーヴ」上映中止について書く。
 十二日、映画館「横浜ニューテアトル」に行ってきた。ここが今、上映中止を求める街宣の標的になっているからだ。東京は既に全て中止、横浜が落ちると首都圏は全滅だ。
 東京の二館は街宣の予告があっただけで中止を決めたが、横浜のここが踏みとどまっているのは、同館が二年前に映画「靖国」を上映中止したことへの反省があるからだ。「靖国」の時は右翼の街宣を三十回も受けたという。映画館が単独でそういう事態に対抗するのは難しい。
 九日に『創』主催で「ザ・コーヴ」上映会を開いた時、登壇した映画の主役オバリーさんが掲げたボードには憲法二十一条の条文が書かれていた。日本には表現の自由があるはずだ、というわけだ。
 隣でそれを聞きながら、私は、外国人に憲法を教示されるという状況に恥ずかしさでいっぱいになった。憲法を実現するための「不断の努力」を日本人、特に言論表現に関わる我々はしているのだろうか。それがなされていれば、アカデミー賞受賞映画が日本だけ上映中止になるという、こんな騒ぎは起きないのではないか。
 さて本題。菅直人首相誕生で、その夫人に関する記事が週刊誌を賑わせている。「ファーストレディと言われたくない」という言葉に象徴される、そのざっくばらんさ故にだ。
 例えば『週刊朝日』インタビューの見出しは「総理なんて全然似合わないわよ」。夫を評して言った言葉だ。同じく『女性自身』の見出しは「本人は嬉しいんでしょうが、私は公邸にも外国にも行きたくありません!」。
 民主党政権の生き残る道は、市民から著しく乖離した「永田町の論理」をどこまで市民感覚に戻すかにかかっている。その意味で、この首相夫人のデビューはなかなかいい。
 さて『週刊新潮』のスクープに端を発した角界の野球賭博騒動だが、相撲協会が一部力士の関与を認めるなど波紋が広がっている。一方、同誌で、暴力団関係者と相撲観戦したと書かれた野村沙知代さんが提訴。別の波紋も広がっている。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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