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篠田博之の「週刊誌を読む」

「愛子さま登校拒否」騒動にみる皇室報道の問題点

 宮内庁の広報は本当にお粗末だ。三月五日の会見で「複数の男児の乱暴なふるまい」で愛子さまが登校拒否と発表したことが国際的な大騒動になった。あまりにも不用意な発表だが、しかし発表したからにはきちんと説明する責任がある。そのことがよくわかっていない気がするのだ。
 案の定、週刊誌は大々的な報道を展開した。その中で気になるのは、例えば『女性自身』3月23日号が表紙に掲げている「愛子さまを足蹴!登校拒否になった問題児同級生の悪態...号泣の現場!」なる話だ。実は登校拒否に至ったきっかけとされる三月二日の男児との接触は、発表された内容よりずっと深刻だったというのだ。記事では保護者の話としてこう書かれている。
 「愛子さまがお帰りになる際に、その男子児童たちとぶつかってしまったそうです。1人の足にひっかかったと聞いています。彼らは『痛えよ!お前』と叫んで悪態をつき、愛子さまの足を蹴ったそうです。そのショックのあまりに、愛子さまは泣いてしまわれたとか......」
 この話は他誌も報じているのだが、細部がそれぞれ異なる。例えば『女性セブン』3月25日号では、足を蹴ったのでなく「足を蹴る真似をした」と書かれている。『週刊新潮』3月18日号も「足で蹴るしぐさをしてみせた」と書いているが、但しこの話は今回でなく昨年七月に起きたことだとされている。さらに『週刊文春』3月18日号には、愛子さまが「首を絞められそうになった」ことがあるとも書かれている。
 週刊誌は「テレビ・新聞が報じない全詳報」などとぶちあげているのだが、肝心のところで事実関係がバラバラなのだ。どうしてそうなるかといえば、各誌の情報源である保護者自身が伝聞をもとに話しているからだ。
 もともと皇室報道は「菊のタブー」に支配され、公式発表を伝えるだけの新聞・テレビと、公式取材の回路を断たれた週刊誌の真偽不明の報道のいずれかしか存在しない。メディアとどうつきあい、情報をどう流すかというのは、行政機関にとって重要な課題だが、宮内庁はそれがひどく遅れている。今回の騒動はその典型であるような気がする。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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