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篠田博之の「週刊誌を読む」

検察裏金への追及 どこまで可能か (2月22日掲載)


 原口一博総務相が十七日、検察の裏金問題について「全部オープンにする。聖域なくやる」と語ったという、そのニュースをテレビで見た時、思わず私は身を乗り出した。本当ならすごいことだ。
 検察の裏金を内部告発しようとして二〇〇二年に「口封じ」逮捕された三井環・元大阪高検公安部長がどんなに大変な目に会ってきたか。彼が収監された〇八年から『創』に獄中手記を連載していた関係で、私はよく知っていたからだ。
 収監後、持病の糖尿病の治療が十分に受けられず生命の危険を予感した三井さんは「閉ざされた塀の中で何が起きても外部にはわからない」「私を生きて塀の外に出さないつもりか」と語っていた。
 結局、この一月に無事満期出所し、その後様々な場で検察批判を展開している。『週刊朝日』2月26日号では、同じく元検察幹部で朝鮮総連ビル詐欺事件で逮捕された緒方重威・元広島高検検事長と対談している。
 その中で三井さんは仮釈放が却下された話に触れている。緒方さんは「このような扱いを受けることはふつうないですよ」と語り、三井さんも「刑務所長が申請した仮釈放が却下される率はわずか2%程度なんですよ」と語っている。「検察の横槍が入ったということがはっきりわかった」という。国家権力の内部告発を企てるような人間がどんな目にあうか。報復は執拗だったというわけだ。
 先の原口発言は、その三井さんが闘ってきた検察裏金の聖域にメスを入れようというもので、おおいに歓迎すべきことだ。ただ実際できるかについては、懐疑的な見方が多い。
 例えば『週刊文春』2月25日号「平野官房長官の"恫喝"鳩山官邸vs検察『10日間の暗闘』をスッパ抜く」。二月四日の小沢不起訴は検察と官邸の取引きによるもので、「九日に政府が公表した国家公務員法改正案では検察庁は対象外となっていた」。つまり検察庁の権益確保と小沢不起訴が裏取引されたという見方だ。これが本当なら、裏金追及は期待できないことになる。
 三井さんは『週刊朝日』で「検察が裏ガネを認めて謝罪してくれる」まで闘うと言っている。その執念が実る日は来るのだろうか。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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