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篠田博之の「週刊誌を読む」

ネット全盛 出版社受難                                                     ドル箱赤字経営を直撃

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 薬物依存で服役し、先頃出所した田代まさしさんの公式ウエブサイトを立ち上げたところ、一日で百万件のアクセスがあったとして話題になっている。どうしてこの話から始めるかというと、このサイトのコンテンツを作ったのは私だからだ。

 自分で関わって改めて驚いたのは、一日で百万人の新しい読者がついてしまうという、ネットというメディアのすごさである。既存の紙のメディアでは考えられないことだ。

 今年は雑誌媒体の危機が叫ばれた年だが、それは恐らくネット社会の進展に伴うメディア環境の変化によるところが大きいのだと思う。先頃講談社発行の『月刊現代』の休刊が話題になったが、その決定には、同じ第一編集局の抱える『週刊現代』が部数急落で多額の赤字を出していることも大きな要因だったといわれる。『月刊現代』の赤字は年間五億というが、『週刊現代』は二十億といわれる。週刊誌の採算割れは出版社の経営を左右する大問題なのだ。

 そして、より深刻なのは、『週刊現代』の急落が加速したのは、加藤晴之前編集長が、ケンカ戦法でタブーに斬りこんでいった時期であることだ。大相撲八百長キャンペーンもそのひとつだった。

 もう一年以上にわたって『週刊現代』は角界追及ではマスコミ報道をリードし、大きな話題になっている。昔なら、これは宣伝効果となってスクープを放った雑誌が売れるはずだ。ところが今は全くそうならない。

 雑誌がスクープを放てばテレビが大きく取り上げ、話題を増幅するのだが、多くの人はそのテレビの報道だけで満足し、話題が完結してしまう。最近はテレビの報道も見ず、ケータイのニュースを見るだけですます人が多いといわれる。

 週刊誌がますます難しい時代になってきた。採算割れに直面しているのは『週刊現代』だけでない。この十二月には読売新聞社発行の『読売ウイークリー』が休刊になる。今年は大型雑誌の休刊が続いたためか、この休刊発表に驚く声は少ないのが現実だ。

 最後に、前回の本欄で週刊誌が相撲の支度部屋の取材を許可されたのが八九年頃と書いたが、九二年頃と訂正しておきたい。