篠田博之の「週刊誌を読む」

「大連立」騒動 

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政治の世界は「一寸先 は闇」と言うが、「大連立」騒動はまさにその典型だった。

『週刊文春』『週刊新潮』が大特集を組んでいるが、締切時点で決着はついていないから誌面作りには神経を使ったに違いない。騒動を報じる週刊誌各誌が大きく問題にしているのは、陰の仕掛人と言われる読売グループのドン渡辺恒雄氏についてである。


 「渡辺会長は報道人な のか」と題する『アエラ』11月19日号の記事には渡辺氏と親しい政治評論家・三宅久之氏のこんなコメントが載っている。                                                            「震源地はナベちゃんひとりなんですよ。元々ナベちゃんは、次の総選挙までには安倍さんは代えざるをえないと思っていた。そのときは福田さんだと。福田さんになれば大連立を持ちかけられる。時期は早かったけど、ジャイアンツが敗退して日本シリーズに出られなくなったから手が空いたんじゃないですか。ナベちゃんも今年81歳。人生の最後に、歴史に残るようなことをやりたかったんじゃないでしょうか」 このコメントが正しいとすればという前提付きだが、何ともすごい話である。報道を担うメディアの人間がここまで現実政治にコミットしてしまうというのは、渡辺氏ならではの、空前絶後の事例ではないだろうか。ここまで行くと、もうジャーナリズムにとってそれは是か非かなどという議論を飛び越えて、ただ唖然とするばかりだ。
 その渡辺氏の狙いがどこにあるかだが、『アエラ』ではジャーナリストの魚住昭さんが「勘ぐれば、目指しているのは憲法改正だろう」とコメントしている。一方『週刊現代』11月24日号の見出しは「ナベツネが仕掛けた大連立は大増税の罠」。狙いは大増税だとしたうえで、自民党関係者のこんな匿名コレントを掲げている。「陰の仕掛け人は、消費税率アップを狙う財務省なのです。福田首相もナベツネも財務省とべったりです」
 真相はヤブの中だが、大連立騒動についてはきちんと検証しておく必要があるのは確かだろう。

 話は全く変わるが『週刊朝日』11月23日号が「温泉盗撮の非道」という記事を載せている。温泉の脱衣場などで女性の盗撮が行われ、その映像がDVDで販売されているという話だが、以前から週刊誌や情報番組で報じられているのに、法的不備で十分な取り締まりができないという現実はいっこうに変わらないらしい。いったいどうなっているのだろうか。