篠田博之の「週刊誌を読む」
第二の西山事件?/2年前の記事なぜ急展開
何やらおかしな成り行 きになってきた。読売新聞への防衛省秘密漏洩事件である。
一等空佐への捜査の動きが報じられた十六日直後は、読売新聞の報道内容は機密と言えるほどのものでないし、「知る権利」の観点から報じるのは当然だという論調が支配的だった。ところが、二十二日に発売された『週刊新潮』『週刊文春』が、これは「第二の西山事件」だという見方をぶちあげたのである。
『週刊文春』3月1日号の見出しは「アメリカ大使館『消えた女』」、『週刊新潮』は「防衛省『機密漏洩』は第2の『西山事件』か」である。特に『週刊新潮』の記事は防衛省関係者がネタ元らしく、読売記者と自衛官を結ぶ女性についてかなり詳しく書いている。
もともと防衛機密に関わる話だから、こんなふうに情報戦が展開されて不思議はないと言える。当の読売新聞は両誌発売日の二十二日朝刊に東京本社編集主幹の見解を掲載し、週刊誌報道を否定した。
そもそもこの事件が不可解なのは、問題とされた読売新聞記事が掲載されたのは一昨年五月。二年も前のことなのだ。それがどうして今、捜査が急進展し、こんなふうに問題になったのか。
これが「第二の西山事件」だという見方は、どうやら報道が始まった当初から流されていたらしい。前出『週刊新潮』にこんな記述がある。「”防衛省の天皇”などと称される守屋武昌事務次官の言動が、記者らの疑念に拍車をかけた。『守屋さんが、”第2の西山事件だ。徹底的に捜査しろ”と周囲に発破をかけているという話が伝わってきた。(略)』」
十六日朝刊の一面トップでこの事件を報じた産経新聞の記事にも、女性の存在が書かれていた。『週刊朝日』3月2日号によると「これを受けて報道陣の間には、『第2の西山事件か』との観測も流れ、一時は騒然となった」という。ところが同誌はこう書いている。「しかし、フタを開けてみればこれは間違い。情報はあくまで記者と1等空佐が直接やり取りしたようだ」
何やら情報が錯綜しているのだが、前出の『週刊文春』には、今回の事件は「警察庁がマスコミにリークしたんです。事件の真相を、首相官邸は一切把握していません」という防衛省幹部の匿名証言も載っている。
この事件の背後には、まだいろいろな事情が隠されているようだ。
(月刊『創』編集長・篠田博之)
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