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公私が曖昧なネット日記/有名人の関係者はご注意を

『週刊文春』2月22日 号が「『承子さま日記』奔放プリンセスが宮内庁に叱られちゃった」という記事を載せている。同誌が2月8日号に掲載して反響を呼んだ「20歳女性皇族赤裸々ホームページ日記」の後日談だ。

 留学中の高円宮家の長女が、海外ということで気を許してか、やや奔放な交友日記をホームページに書いていたのを同誌がかぎつけ報道した。「胸にヤモリの刺青入れたい」「男の人2人にナンパされた」など二十歳の女の子なら珍しくない内容だが、それが皇族とあって騒動になった。

 『週刊文春』によると日本では週刊誌以外の大手マスコミは黙殺したものの、ネット社会で大きな話題になった。また海外では中国、香港、台湾などの新聞社がその記事を取り上げたという。そして発売後の定例会見で宮内庁長官が「皇族の方々のご活動が、皇室に相応しいものであってほしい」と苦言を呈したというのだ。

 この事件は、皇室ないし皇族というのが、日本社会においてどんな特別な存在なのかという興味深い問題を提起しているが、もうひとつ、ネットとマスメディアの関係についても問題を投げかけたように思う。ホームページ上の日記というのは書いている当人にとっては私的なものだが、ネットに載った途端に公的な意味を持つ。特に週刊誌にとっては有名人の私的な情報はおいしいニュースだから、たちまち大々的に取り上げられる。

 同様のケースが『週刊新潮』2月22日号の「巨人『原監督』息子にバラされちゃった『高校生をベロンベロンに飲ませた夜』」だ。巨人軍の原監督の息子らしい高校生がミクシィに書いた内容が大きく取り上げられた。例えば昨年十二月二十五日の日記では、親戚が集まってクリスマスパーティが開かれたことが書かれ、「父親にかなり飲まされてベロンベロンな状態」という記述もある。 本人は私的な日記のつもりだからオーバーに表現している可能性もあるのだが、こんなふうにマスメディアに取り上げられると、本人の意図を越えてそれは「騒動」となっていく。同誌の取材を受けた原監督のコメントは「書いてあることで社会的に好ましくないと思われる部分が事実ならば遺憾です」という戸惑いに満ちたものだった。

 私的と公的の線引が曖昧なのはネットというメディアの特性かもしれない。有名人の関係者は要注意!である。 

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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