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2006年3月アーカイブ

 この1週間ほど超多忙でした。『創』の最終締切の段階は徹夜になるのですが、今月はちょうどそこへ奈良女児殺害事件の小林薫被告の裁判が重なり、忙しいあいまをぬって奈良まで出かけるなど綱渡りの進行でした。学生時代以来20年ぶりに奈良に行きましたが、呑気に鹿を見てる場合ではなかったのです。

 そういえば法廷取材を手伝ってくれた関西の学生諸君、どうもありがとう。メルマガ読者も複数の人が一緒に傍聴しました。私は作家の佐木隆三さんの隣の席でした。夕方傍聴が終わってそのまま帰京し、原稿を書いて印刷所に渡したのですが、実はその前、会社に夜9時半頃帰ると、そこへフジテレビのカメラクルーが待っていて、翌朝(28日)の「とくダネ!」のインタビューを受けたのです。

 番組では結構大きく取り上げていましたが、27日の公判は午後の大半を使って、小林薫被告の『創』連載の手記について審理が行われたのです。あの「娘はもらった」メールで日本中の母親を震撼させた奈良事件、いま裁判は重大局面にさしかかっています。つまりあれは実は殺人事件ではなかったという推理小説ばりの大どんでん返しなんですが、詳しくは7日に発売される5月号の誌面を読んで下さい。    

 きょうは実は宮崎勤死刑囚に面会してきました。死刑確定囚の場合は、家族と弁護人以外はこれまで面会はできなかったのですが、今回特別にそれが許可されたのです。どうしてそうなったかは、今国会で審議中の監獄法改正と関わりがあるのですが、これについては5月発売の6月号で詳しく報告します。

 近々国会審議される共謀罪がらみでも28日にはシンポを主催したりと、とにかくバタバタの日々(ちなみに共謀罪って聞いて知らない報道志望者がいたら、少しやばいと思って下さい)。慢性疲労状態が続いています。

 宮崎勤は死刑が確定して、いつでも処刑されかねない状態になったのですが、その意味をほとんど理解していないようでした。

 小林薫も自分は死刑を覚悟したと言っているのですが、死刑問題が身近になっているきょうこの頃。そういえば4月は林眞須美さんのところへも行く予定です。
                            
  (篠田)

 就職戦線本格化ということで、いろいろな媒体が就職特集を掲載している。『日経エンタテインメント!』は発売中の4月号で「エンタ業界就活最前線」という特集記事を掲載。私へのインタビューも載っているのだが、取材に来たのは慶応大卒のマス読OBの女性編集者。マス読OBはこんなふうにマスコミ界全般で活躍しているのだが、最近、慶応卒の活躍が目立ち、早大が押され気味。マスコミは早大卒の独壇場と言われた時代は終わろうとしているのだろうか。

 先頃、新聞社の採用試験についての連載記事を載せたのは新聞業界団体の機関紙「新聞協会報」。3回にわたる連載の第2回は「業務体験型試験、各社に広がる」という見出しだ。業務体験型試験というのは、朝日・読売・産経などがやっている模擬取材や模擬会見といった実践的な試験のこと。これがこの何年か急速に拡大しているのは『マス読』でも紹介しているが、今年は静岡新聞、中国新聞などでも導入予定とのこと。職種別でなく一括採用の南日本新聞の場合は、意地悪な客を相手に新聞の購読勧誘を行うという「模擬営業」試験を昨年、受験者全員に課したという。

 興味深いのは、産経新聞が今年、「街頭での模擬取材」をやめる可能性を検討しているという記述。模擬取材は採用側の負担が大きいうえに、最近は志望者がこういう試験があることを事前に知って準備してくるため当初の効果が薄れているのでは、という声もあるという。ただし産経新聞の場合、模擬取材は中止しても、1泊2日の支局訪問は実施するという。

7日に発売された月刊『創』4月号新聞特集でも、現場座談会の中で新聞記者採用について語られている(P75)。元毎日新聞の北村さん(『週刊金曜日』編集長)が「かつての記者志望はジャーナリズムに関心を持っているのが当たり前だったが、今はそういう本質的なことよりも給料や待遇に関心を持つ志望者が増えた」という話をしている。また、一方で最近は新聞ジャーナリズムに絶望して中途退社する記者が増えているという話も紹介されている。これらは新聞界が変わりつつあることの反映なのだろう。

 ちなみにこの『創』の特集は、(特に若い人たちに)新聞が読まれなくなりつつあるという深刻な現状に新聞各社がどう対応しようとしているのかを探ったもので、新聞志望者は必読だ。

 報道志望の人たちには、目先の受験対策もよいが、こういう本質的な問題を考えていっていただきたいと思う。

 そういえばマス読実践講座受講者から続々内定者が出ているが、某大手マスコミに内定した学生は、以前本欄で紹介した、裁判の傍聴などで顔をあわせた人。こんなふうにジャーナリズムに関心を持っている学生がマスコミに合格したという話は、とりわけうれしい知らせだ。『マス読』は実用的な試験対策ももちろん教えるが、もっと本質的な問題にも目を向けてほしいと絶えず言っているのが特徴だから。             
 (篠田)

 以前からお知らせしていた文藝春秋訪問だが、希望者が殺到し、結局100人もの大量参加となった。文春側の厚意で、50人ずつ2組に分けて3月2日に実施したが、普段は入ることのできない『ナンバー』や『週刊文春』の編集室にまで入って見学し、説明を受けるという、編集志望者には大変ありがたい企画だった。案内してくれたのは木俣さんという文春の編集幹部で、こんな贅沢な機会はめったにないのだが、驚いたのは当日、遅刻してくる学生が何人もいたことだ。ここまでの機会を与えられながら遅刻というのは、社会人なら考えられないことで、該当者には大バカ者と喝を入れたい。
『マス読』がセットしてマスコミ人と学生の会食といった企画もこれまであったが、必ず遅刻してくる人がいるうえに、中には会食の予約までしているのに無断欠席する人もいる。

 こういう学生気質は、就職活動を機に改めてほしい。本番の試験に遅刻する人も毎年珍しくないのだが、自分の一生に関わるような時に、それはいくら何でもまずい。最近創出版から発売された『広告業界就職のススメ。』には、業界の話だけでなく、就職活動で留意すべきこともたくさん載っており、グループでOB訪問した時に気をつけるべきこととかが書かれている。ぜひ読んで参考にしてほしい。

 OB訪問を強く希望され、忙しい時間を無理にあけたら、当日になって変更の電話をしてくるとか、ドタキャンしてきたとかとんでもない学生がいる、といった話が毎年、業界人の間で語り草になる。もちろん遅刻やドタキャンの学生は少数なのだが、そういう迷惑をかける人が少数でもいると、グループでの会社訪問といった企画そのものが今後できなくなる恐れもある。こういうのはマスコミに限らず社会人として最低限のマナーに属する事柄だ。ぜひ注意していただきたい。  

 今回は最近の新聞社の試験における模擬取材の動向といった話を書こうと思っていたのだが、長くなったので、それは次回にしよう。 
                             (篠田)