<週刊誌を読む>

角界の混迷を反映か 非難噴出の貴乃花断髪式  
                 
(東京新聞03年6月8
日掲載)

 『週刊新潮』6月12日号がそんな見出しで、六月一日に行われた貴乃花断髪式について報じている。相撲好きで知られる漫画家のやくみつるさんでさえ、今回は中継を「見る気がしなかった」。チケットをめぐるゴタゴタがあったり、「すべてがテレビ中継のスケジュールに合わせて作られていた」ためだという。

 独占中継したフジテレビが払った放映権料は推定二億円もの高額。断髪式でハサミを入れる人数が五十人とされたのも一時間半の放映枠に収まることを配慮してのこと。パーティーで相撲関係者よりタレントばかりが目立ったのもテレビ中継を意識しての演出だったという。記事中で相撲協会関係者が「こうしたテレビ局主導の断髪式は初めてでした。おかげで角界では非難囂々(ごうごう)」と語っている。

 「イヤな話」の最たるものは事前のチケット販売をめぐる騒動だろう。「貴乃花が暴力団を引き連れ元後援会事務所に殴り込み!」(週刊文春6月5日号)「貴乃花断髪式チケットをめぐる警察出動現場」(フラッシュ6月10日号)などと週刊誌が報道。文部科学省競技スポーツ課が日本相撲協会に事情説明を求める事態にまで至った。

 週刊誌が報じた事件があったのは今年の三月二十八日。中野区にあった当時の後援会事務所を貴乃花が自ら訪れ、チケットを引き上げたのだが、黒ずくめの暴力団員ふうの男たちが同行していたとかで、事務所側が警察に通報。警察官が駆け付ける騒ぎになった。

 貴乃花側は、後見人とされる人物が『週刊現代』6月14日号に登場して釈明。それによると、元後援会事務所の管理があまりにズサンだったためチケットを引き上げたもので、暴力団員ふうの男というのは心当たりがない。三月の話が今頃週刊誌に出たのは元の事務所側が関与しているのでは、とのことである。

 放映権料を含めて今回の断髪式の売り上げは四〜五億円になるという。チケット販売を従来の相撲茶屋に任せるやり方を改めたり、イベント全体をテレビ主導にしたりというのは貴乃花夫妻の考えによるものらしい。それに対して、角界の人間関係よりもカネを優先した、といった非難が週刊誌に噴出した現実は、「若・貴時代」が終わって先行きの見えない相撲界の混迷を反映したものと言えるかもしれない。
(メディア批評誌『創』編集長・篠田博之)