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<週刊誌を読む>
●消費されるスキャンダル 『愛人報道』告白女性の不安 (東京新聞03年4月30日掲載)
中西ミツ子さんから電話があった。かつて宇野元総理の”三本指”スキャンダルを告発した女性だ。今は再婚して実際は別の姓である。
あれから十四年も経つのに、今でも彼女のもとに「あの人は今」なる定番企画で時々、週刊誌の取材が入る。彼女はそのテの取材を全て断っていた。しかし、今回は『週刊文春』の取材を受けたという。今話題の山崎拓自民党幹事長の元愛人との対談だった。
中西さんが断れなかったのは、その女性本人から直接電話で説得されたためらしい。対談は、同誌5月1・8日号に掲載された。山崎幹事長を告発した女性は、自分が今後どういう状況にさらされるか不安があり、中西さんの話を聞きたいと考えたようだ。
中西さんも当時そうだったが、今回の女性へも逆風が既に吹き始めている。『週刊新潮』5月1・8日号は「顔を晒(さら)して金儲け 『山拓の愛人』のイヤ〜な感じ」という記事を掲載。金をもらって愛人を務めたはずなのに、今になって被害者顔で告白本を出し、宣伝のために顔をさらすとはどういうことか、と批判を行っている。
確かに今回の女性、外国特派員協会での会見のほか、『週刊ポスト』5月2日号に「せんせいが愛したコスプレSEX」と題し袋とじのグラビア企画に登場。露出が多い分、当然反発も強まる。 本人の名誉のために書いておけば、この女性が先頃上梓した『せんせい』という告白本、私は興味深く読んだ。週刊誌などには山崎幹事長とのセックス描写ばかり取り上げられているが、自分が性の対象としてしか扱われなかったことへの反発や、女性としての葛藤が丹念に書かれている。昨年、『週刊文春』で告白を行った後、ストレスでパニックに陥ったことも率直に書かれている。
『週刊文春』今回の「愛人対談」では本人が「先生の変態性癖ばかりがクローズアップされて、その裏にある政治家としての資質を問う部分が理解されないのではないか」と不安を述べている。この不安はもっともで、彼女がどんな思いで告白したにせよ、メディアはスキャンダルを消費の対象としてしか扱わない。 恐らく金を出すからヌードに、といった依頼も彼女に来ていることだろう。そんなふうにメディアに消費し尽くされてボロボロになる、というありがちなパターンにならないように。彼女にはそうアドバイスしたい。 (メディア批評誌『創』編集長・篠田博之) |