<週刊誌を読む>

「死ぬより生きるのがつらい」ネット集団自殺に見る心の闇
                 (東京新聞03年3月3日掲載)

 先頃「ネット心中」などと報じられた男女三人の集団自殺について、取り上げておこう。2月11日、埼玉県入間市で起きたこの事件、インターネットの掲示板で「心中相手募集」という書き込みがなされたのが発端だったことから、マスコミで話題になった。

 発見者は、途中までその集団自殺に参加しようとしていた女子高生だった。また「心中相手募集」の書き込みを見て応募しながら、既に締め切ったと言われて参加しなかった女性もいた。後に週刊誌で紹介されたこの女性の情報によれば「3人のほかにあと2人、第4、第5の”心中メンバー”がいたそうです」(フラッシュ3月4日号)。

 面識のなかった彼らを結びつけたのはインターネットだったが、掲示板で「心中相手」を募集した男性はこう書いていた。「年齢は問いません。やっぱり独りだと寂しいですからね」

 気になるのは、亡くなった3人がいずれも失業中だったことだ。呼びかけた26歳の男性は「昨年、出版販売会社を退職後、再就職できずに悩んでいた」(週刊朝日2月28日号)。24歳の女性は昨年九月、ネットにこう書き込んでいた。「今年4月に首になり、それいらい、80社位就職活動をしてきました。成果はなく無職の状態です。おかげで、日に日に精神的苦痛が強くなっていきました。就活がやになり、毎日ぼんやりとした日々です」

 三人めの22歳の女性も「昨春、早稲田大学商学部を卒業した才媛」「家族に就職できない苦しさを訴えていた」(週刊女性3月4日号)。

 昨年「3万人が自殺する国」という特集を組んだ『週刊金曜日』12月6日号によると、日本では九八年以降、自殺率が急増しているという。これは「五〇年代、八〇年代に次ぐ戦後三回目の大きな山」。そして自殺率の増加と失業率の悪化には相関が見られるという。失業率の悪化に象徴される社会の閉塞状況が、自殺増加の背景となっているというわけだ。

 今回、集団自殺した三人の一人である女性は、「決意表明」と題する昨年9月のネットへの書き込みで、こう述べていた。「正直、死ぬのは怖いですが、生きていく方がもっと辛いので、絶対成功しなければならないと思っています」。 

 死ぬよりも生きている方が辛いという社会を、我々はどう考えるべきなのだろうか。