マス読メーリングリストの軌跡

《創出版よりのコメント》 
 以下に掲載するのは03年度、マス読メーリングリストを利用していたマスコミ志望者の勉強会の実施報告です。今年度利用者の参考のために公開することにしました。

 03年度はこういう勉強会が数グループたちあがり、創出版と連絡をとりあっていたのですが、当方もなかなかバックアップが十分にできず、ほとんど参加者にお任せ状態でした。この報告を読むと、勉強会の参加者が2〜3人だったりして、当事者が運営に苦労していた涙ぐましい様子も窺えます。ここに出てくる雑誌の比較論評などは、月刊『創』の得意分野でもあり、もう少し協力してあげればよかったと思う次第です。

 そこで今年度はMLを通じて企画を出しあい、もう少し協力態勢をとるつもりです。もちろんこうした活動はあくまでも参加者が自主的に、というのが基本で、当方としてもその原則を踏まえた上でのことになります。そのへんも含めて、報告をお読みください。ネット上での作文合評など、内容自体はおおいに参考になるものです。

《出版勉強会 平成15年度就職試験対策活動記録》

1 勉強会の記録

▼第1回
 2月6日
  雑誌論評【レジャー情報誌の比較】
  ルノアール会議室
▼第2回
 2月11日
  雑誌論評【週刊誌の比較】
  ルノアール会議室
▼第3回
 2月15日
  三大噺対策【作文練習】
  ファミレス
▼第4回
  2月17日
  小学館落選ES反省会
  ファミレス
▼第5回
  2月18日
  エントリーシート回し読み
  学生情報センター
▼第6回
  2月21日
  書籍・作家批評
  学生情報センター
▼第7回
  2月28日
  エントリーシート回し読み
  ファミレス
▼第8回
  3月2日
  エントリーシート回し読み
  ファミレス
▼第九回
  3月4日
  エントリーシート回し読み
  ファミレス
▼第10回
  3月22日
  雑誌論評【ファッション誌の比較】
  ルノアール会議室
▼第11回
  3月28日
  再販制、委託販売制について
  ルノアール会議室
▼第12回
  4月4日 
  雑誌論評【少年コミック誌の比較】
  ファミレス
▼第13回
  4月8日
  人物寸評対策
  ファミレス
▼第14回
  4月16日
  角川書店エントリーシート回し読み
  ファミレス
▼第15回
  4月22日
  マガジンハウスES対策
  早稲田大学学生会館
▼第16回
  5月2日
  面接練習
  早稲田大学学生会館
▼第17回
  5月6日
  面接練習
  早稲田大学学生会館
▼第18回
  5月16日
  角川書店対策 課題書籍論評
  ファミレス
▼第19回
  6月12日
  面接対策
  喫茶店
▼第20回
  6月15日
  面接対策
  ファミレス

2 各回の勉強会の内容と反省

▼第1回 雑誌論評
 情報誌の比較 「Tokyo Walker」と「TOKYO一週間」を比較

 参加者8名のうち2名が簡単なレジュメを作成し、それに基づいて両誌を比較。各参加者はあらかじめ両誌の最新号に一通り目を通してきていた。まずはレジュメ作成者がレジュメについて説明。その際、気になった点があれば他の参加者は随時意見や質問を述べる。説明が終了した後は各自考察した両誌の違いについて等話し合った。

・ レジュメ作成者が題材の愛読者でなかった点、各自が目を通したのが最新号のみであった点などから表面的な考察となった。(見れば分かるようなことがほとんどであった)背景や変遷などまで考察するにはやはり愛読者がレジュメを作成した方が良い。

・ 題材を選んだ基準が甘い。後日何故この2冊に「ぴあ」が入っていないのかという指摘を受けた。どのジャンルでどんな雑誌が売れているかということを調べてから題材を決定するべきであった。

▼第2回「雑誌論評」
 週刊誌の比較「週刊文春と週刊新潮」

 大まかな流れは前回と同じだが、今回はレジュメ作成者が両誌の愛読者であったため、話し合う場面よりも作成者による解説の場面の方が多かった。

 まず参加者が4名しかいなかった。そのため多角的な意見が出難かった。全員の意見が画一的になりがちであった。また、作成者に対して他の参加者の読み込みの深さがかなり浅かったため(志望ジャンルと異なる場合愛読していないことが多いためこうなりがち)ほぼ作成者が解説するだけに終始したため、レジュメの内容以上に論が発展することは無かった。これならメーリングリスト上でレジュメを流しても大して効果は変わらないと言える。

▼第3回 「作文練習」
 小学館筆記試験対策 三大噺の練習

 まずあらかじめ作成したくじを用いて3つのキーワードを選び、それをテーマにして実際に時間を測って三大噺を書く。書き終わった後は各自作文を交換し、批評する。

 メーリングリスト上でも作文の交換は行っていたが、大きな違いはその場で与えられたテーマの作文を限られた時間無いに書くという点にあり、本番での作文の練習としては効果的であったように思う。新宿のファミレスで行ったが、ルノアールや学生会館のような個室を用いればより効果的であったのではなかろうか。ただ、テーマ選びに難があり、結果的にこのときの勉強会で候補としていたテーマが実際の試験に出ることは無かった。テーマの選定についてはあらかじめメーリングリスト上で話し合う等しておいた方がよかったのではなかろうか。また、可能であれば新聞社の志望者に相談してみても良いように思う。

▼第4回 「小学館ES反省会」
 書類選考で落とされたエントリーシートの交換

 書類選考で落とされた小学館のエントリーシートのコピーを持ち寄り、回し読みした上でどこが悪かったのかを話し合った。
次回同じ失敗をしないためには必要な勉強会だったように思う。

▼第5回、7回、8回、9回、14回「エントリーシート回し読み」
 下書きしたエントリーシートの回し読み

 エントリーシートの下書きを持ち寄って各自交換し、いい所や悪い所を指摘しあう。
 
 他人に見せることで自分では気付かなかった視点からの指摘を受けることができるので非常に効果的だったと思う。ただ、勉強会を行う中で問題だったのがちゃんと下書きが出来ていない状態の参加者が多い場合、ただの雑談に終始しがちな点だった。得に講談社のES等はボリュームが多いため一回書くのに時間がかかるため短い間隔で勉強会を行うとかけていない状況で参加する人が増えてしまっていた。また、参加者は皆就職活動中のほぼ同年代なので視点が偏る恐れもある。時折立場の違う協力者を(社会人、フリーター、可能なら出版社に勤務している人等)得て違う視点からの意見を取り入れたほうがいいかもしれない。

▼第6回 「作家 書籍批評」
 自分の好きな作家や書籍について論評する

 面接の際に「好きな作家」「愛読書」を質問されることを想定して行った勉強会。各参加者が自分の好きな「作家」や「書籍」について何が好きか、何故好きかを説明する。例によって意見、質問があれば適宜述べていくと言う形式。

 参加者の中で好きな作家や愛読書がバラバラだったため、結局ほとんど雑談に終始する結果となってしまった。一部共通の好みを持つ人達もいたが、その作家や作品を知らない人は話に入れないため、8人いた参加者がほとんど3つ4つの小グループに分かれる結果となってしまった。このテーマに関しては勉強会一回を割くよりもメーリングリスト上、もしくは各個人で突き詰めた方が良いかもしれない。

▼第10回 「雑誌論評」 
 女性ファッション誌の比較

 基本的には今までの雑誌論評と同じだが、今回は題材とする雑誌を絞らずに比較を行った。レジュメは女性ファッション誌志望の参加者が作成。

 全体的な考察を行ったため各誌それぞれに対する考察は若干浅くなってしまったが、参加者に女性が多かったため、何らかの女性ファッション誌の愛読者が多く、話を発展させ易かった。ただ、男性陣のほとんどに知識が無かったため男性側に対する説明に時間を取られてしまった。同じテーマで何度か勉強会を繰り返すか、もしくは女性ファッション誌志望者のみで勉強会を行った方が良かったかもしれない。

▼第11回「出版に関する制度について」
 再販制、委託販売制について

 偶然勉強会参加者に大学で再販制、委託販売制について授業を受けたことがある人がいたのでその参加者がレジュメを作成。授業のプリントなどを持参した上で両制度について解説。

 参加者が3名と非常に少なかったため、制度に関する説明に終始した感があった。一度説明の勉強会をやってから機を改めて両制度の必要性、意義を話し合う勉強会を行えば、ディスカッションの練習にもなったのではないかと思われる。業界研究としては効果があったと思う。

▼第12回 「雑誌論評」
 少年コミック誌の比較

 週刊少年ジャンプ(集英社)、週刊少年サンデー(小学館)、週刊少年マガジン(講談社)の三誌について比較した。愛読者がレジュメを作成し、解説。随時質問、意見があれば述べると言う形式。少年チャンピオンは部数の違いから競合しているとは考え難いので比較の対象にしなかった。

 概ね他の雑誌論評と同じように行った。しかし、勉強会の参加人数が少なかったこと、参加者の中にコミック誌志望者が少なかったことからやはり意見は出難かった。

▼第13回「筆記試験対策」
 文芸春秋対策 人物寸評練習

 文芸春秋の試験前日、参加者全員が30名程度人物寸評の予想問題を作成し、持参。各自交換して予想問題を解いた。
参加者は三名だったが、各参加者それぞれ予想問題に挙げている人物が異なっていたため効果はあったように思う。実際に本番で出題された問題もいくつかあった。ただ、前日に一回しか行わなかったため反復する時間も少なく、効果が薄かったようにも思う。やるならば遅くとも四月下旬から3回以上はやった方がよいのではなかろうか。

▼第15回 ES回し読み
 マガジンハウス対策

 マガジンハウスでのアルバイト経験者(勉強会参加者ではない)に協力してもらい、エントリーシートを見てもらった。同時進行で他の参加者同士でもESの回し読みを行った。

 アルバイト経験者の協力があったためか、過去最高の参加者数だった。(13名)しかし、参加者が多すぎたため勉強会中も雑然とした雰囲気になってしまい、回し読み等を行う人の他に雑談している人、話に入れない人等が出てしまっていた。

▼第16回、17回、19回 「面接練習」
 面接練習 新潮社他対策

 早稲田の学生会館等で実際の面接を模して質疑応答を行った。その際練習したい企業のエントリーシートを持ち寄り、面接官役は交代で行った。質問の内容は面接対策の本や、過去に受けた面接を参考にして考えた。

 場慣れという意味で効果があったように思う。定番の質問でも実際に聞かれてみると答えられないと言う場面が多かった。しかし、所詮学生(受験者)では面接官の気持ちは分からないという意見もあった。第19回などは実際の面接を模することはせずに「やりたい企画」というテーマで話し合った。面接練習は可能ならばOB等に協力を求めた方が確実ではないかと思われる。そういった意見が出される一方で試験管役を体験することで受験者のどのような行動がどのように見えるか分かって勉強になると言う声もあった。

▼第18八回 「角川対策」 
 佐野眞一「誰が本を殺すのか」について

 角川筆記試験の課題図書である「誰が本を殺すのか」についてその内容について話し合った。議論した内容はブックオフに対してはどうするべきか、本屋について等。

 問題点として参加者(4人)が全員「誰が本を殺すのか」を読了していなかったと言う点が大きかった。そのため、話題が予備知識のある身近な「ブックオフ」等について等に限られてしまったように思う。それでも話が発展し角川として今後どんなメディアとメディアミックスを行えばよいか、等を話し合えたのは面白かったと思う。

3 Web上での活動の内容
 メーリングリスト(以下MLと省略)を利用した活動。
主な活動は
・ 作文練習
・ 筆記対策
・ 試験報告
の三種類

<作文練習>
「みんなでテーマを決めて一斉に…」という物ではなく、各自が作成中のエントリーシートの課題作文等をエントリーシート提出前にML上で流し、その作文に対して他のメンバーが随時ML上で批評を行うというもの。

<筆記対策>
 各参加者が筆記試験に出そうな問題を予想して作成。それをML上で流し、他の参加者が随時それに対する答をML上で流す。出題から一日〜二日後に出題者は解答をML上に流すというもの。

<試験報告>
 出版社の就職試験を受けた後(主に当日か翌日)、どんな試験だったかその内容と反省をML上で流す、というもの。

4 各種勉強会の反省と考察
 2、3で挙げた各勉強会についてその内容毎に管理人の反省、及び参加者に行ったアンケートの結果を基に考察してみた。

オフライン版
A・雑誌論評
 結論から言うとあまり有意義ではないように思った(且つそのような意見が多かった)

 理由は以下のようなもの。
・ 自分が志望するジャンル以外の雑誌に関してはあまり深く考察しても意味が無いのではないか
・ 多くの場合、そのジャンルの志望者以外はそのジャンルについて知識がないので、ほとんどレジュメ作成者が一方的に自分の知識を放出するだけになり、発展し難い。
・ 最新号だけ読んでもその雑誌・出版社の背景を知ることは難しいのではないか。ある程度の聞かん購読している雑誌でないと難しい。 
 
 ただし、業界研究としては役に立ったという意見もあった。しかし、これについても志望する出版社においてメジャーなジャンルであるかどうかで意見が分かれる所だと思う。

 改善点としては、参加者がある程度の人数いるのならば、雑誌論評はそのジャンルの志望者のみで行った方が良いように思う。それでも個人作業で間に合う部分は多いので、勉強会の時間を雑誌論評に割き過ぎない方がよいと思われる。

B・エントリーシート回し読み
 概ね好評。難点としては、勉強会当日になってもESの下書きを書完成させずに参加する人が多く、勉強会の前半がエントリーシートの作成に当てられてしまい、時間の無駄になることが多かった点。

 他の意見・感想
・ 一人で書くとどうしても独り善がりになってしまう。人に見せられるのは良かった。
・ 他人のESを見ることが刺激にもなる。また、批評することも勉強になった。
・ 出版社側の人間と学生では見方も違うのではないか?

 改善点としては、事前にESの下書きを完成させていることを参加条件にすること(ただし参加人数が少なくなってしまう可能性が高い。)と、可能であれば出版社で働いている知人等から協力を得た方がより効果が高いのではないかと考えられる。

C・作文練習
 ML上と違い、同一テーマで時間を測って練習できる点がメリット。難点としてはテーマの選定が難しい。特に三大噺等は予想がし難かった。時間を測って作文を書く、という作業になれるという意味では効果があったと思う。

 改善点としては、ファミレスなどではなくもっと静かな場所で緊張感を持って行った方が良いと思われる。

D・筆記対策(文芸春秋対策)
 人物寸評の練習は各自問題作成に際して予想する人物のジャンル等が違い、非常に効果があった。事実当日の試験に出題されたものもいくつかあった。惜しむらくはより取り組んだ時期が遅く、一度しか練習できなかった点。


E・面接練習
 賛否両論意見が分かれた。賛成側は場慣れできるという意見、反対側は「学生に面接官の真似事はできない」というもの各意見は以下の通り。
・ 自分が何をやりたいのかを「説明する」練習になる。
・ よくある質問に対する答え方の練習になる。
・ 些細な仕草や言い回しなどのチェックができる。
・ 企業研究が不充分な人間が面接官をやっても意味が無い。
・ 早期の段階で、特定の企業を想定せずにやるべきだった。

メーリングリスト上での活動

A・作文練習
 こちらは書いてすぐに流せる点や手軽に批評ができる点が好評だった。勉強会での作文練習が作文試験対策、ML上での作文練習はESの課題作文の対策という使い分けが為されていた。
・ 他人の作文を読むことが刺激になる。
・ 他人の作文に対する指摘を読んでも勉強になる。
・ もっと数をこなすべきだった。
・ 課題作文以外のものにも取り組むべきだった。

 改善点としては上記で指摘されているように、もっと早期に取り組み、数、種類をこなすべきだったと考えられるが、今年度のように1月に発足した勉強会では限界があったように思う。勉強会の活動を行うのであれば、少なくとも前年の年内には勉強会を発足した方が良いのではないだろうか。

B・筆記対策
 とにかく出題数が少なかった。そんな中でそっくりそのまま本番でも出題された予想問題等もあったのでやる価値は確実にあると思われる。何よりの難点は予想問題を出題する難しさと手間が出題者を少なくしていることだった。幹事の個人的な意見としては、幹事がもっと率先して出題するべきだったと反省している。

C・試験報告
 自分だったらどうするか、と置き換えて考えることで面接対策の一環にはなったと思う。

 しかし、あくまで情報は情報に過ぎず、そういう意味では活かすも殺すも個人次第の感があった。
・ その他やってみたかった勉強会

ディスカッション練習
プレゼンテーション練習

 実際にこのような形式の選考がある企業もあったことから事前に練習の機会があればよいように思った。問題点として、面接練習と同じように「学生と面接官では立場も知識も考え方も違う」点や「テーマの選定が難しい」という点が想定されるが、必ずしも本番と同じ物でなくても事前にそれに近い形のものを経験しておくことによって得られるものは大きいのではないかと思う。時事関係でなければ前年に出題されたものなどを利用することも可能であると思われる。